
夕刻、家事の手伝いで井戸に来た子どもたち
井戸で水を汲む子ども〔ラオス/ナムグン〕
1997年、ラオス北部の小さな田舎町、ナムグン。
そこにはまだ電気も水道も通っておらず、人々は昔ながらの生活を送っていた。夜になると、町全体が暗闇に包まれる。そんな中で、各家庭では蝋燭(ろうそく)に火を灯し、ぼんやりとした暖かい光で部屋を照らす。蝋燭の揺れる炎が壁に影を作り、夜の静けさと相まって、不思議な落ち着きを感じさせる。
裕福な家庭の中には発電機を持っているところもあり、そうした家では蛍光灯が使われていた。発電機の音が小さな町に響き、その家だけが白く明るい光を放っているのが遠目にもわかる。その光に惹かれるように、近所の子どもたちが集まり、座って談笑していた。
水道が整備されていないため、人々は雨水を大きな水がめに溜めて生活用水として使っていた。屋根に設置された簡易的な雨どいを伝って、水が静かに水がめに落ちる。その水は主に飲み水や料理に使われるが、洗濯や掃除には井戸の水を汲んで使用することが多かった。
井戸から水を汲むのは、たいてい子どもたちの役割だ。大きなバケツを抱え、家の水がめを満たしていく。小さな手でロープを引っ張り、重たい水を汲み上げるのは決して楽な作業ではない。しかし、子どもたちは手際よく動き、慣れた様子で水をこぼさぬように運んでいた。
洗濯もまた、大変な作業だった。洗濯機がないため、大きなたらいや川のそばで手洗いをする人々の姿をよく目にした。
石鹸を泡立て、衣類をゴシゴシとこすり合わせる。頑固な汚れはなかなか落ちず、何度も水を変えてはこすり直す。特に白い衣類を綺麗にするのは至難の業だ。
私も自分の衣類を洗ってみたが、なかなかきれいには仕上がらない。それでも、慣れた手つきの女性たちは、淡々と作業を続け、最後にはしっかりと絞り上げた衣類を竹竿に干していく。太陽の下で乾いた洗濯物は、太陽の香りを含んでいて確かに心地よい。
子どもたちはただ遊ぶだけでなく、家の手伝いもしっかりとこなしていた。
食事の準備を手伝う子どももいれば、食後の食器を洗う子どももいる。包丁を手にして野菜を刻む姿や、小さな手で皿を丁寧に洗う姿があちこちで見られた。
兄弟姉妹で役割を分担し、助け合いながら家事をこなしているのが印象的だった。日本では家事を手伝うことが少なくなりがちな子どもたちも、ここでは当たり前のように家の仕事に加わり、家族の一員としての責任を果たしていた。
そんなナムグンの暮らしで、ひとつ驚いたのは意外にも食事の美味しさだった。
電気が通っていないため、当然ながら冷蔵庫もない。食材は保存が効かないので、その日のうちに使い切るのが基本となる。その結果、食事には新鮮な野菜や肉、魚が使われ、どれも味が濃くて美味しかった。
市場で買ったばかりの野菜はみずみずしく、井戸水で洗ったばかりの米には甘みがあった。スパイスやハーブを巧みに使い、シンプルながらも深い味わい料理が食卓を彩る。家族みんなで囲む食卓には、どこか温かみがあり、穏やかな時間が流れていた。
ナムグンの暮らしは、便利さとはほど遠い。しかし、その不便さの中に、家族の絆や助け合いの精神が息づいていた。電気がなくても、水道がなくても、人々は知恵を絞り、工夫をしながら生活をしていた。そして、その暮らしの中では、日本でも声高に叫ばれている「生きる力」が確かに育まれているように感じられた。
井戸で水を汲む子ども〔ラオス/ナムグン〕<Kids>
<Kids>はキッズと読むよ。「子ども」という意味。大人の文章はちょっと固くて読みにくいよね。<Kids>の表示がある文章は、小学生や中学生でも読みやすい文章にしているよ。これからキッズのみんなに読んでほしい記事をたくさん書こうと思ってるからときどき遊びに来てね。検索窓に<Kids>または<キッズ>と入れてキッズ向けの記事を探してね。くまの先生より
1997年、ラオス北部の小さな田舎町、ナムグン。
この町には電気も水道もまだ通っていない。でも、人々は昔ながらの生活をしながら、毎日を元気に過ごしていた。
夜になると町は真っ暗。でも、家の中ではろうそくの灯りがゆらゆら揺れて、ほんのりとした暖かい光が部屋を照らす。壁に映る影がゆっくり動いて、不思議と落ち着くんだ。
少しお金持ちの家には発電機があって、蛍光灯の明るい光が見える。その光にひかれて、近所の子どもたちが集まり、おしゃべりを楽しんでいた。
水道がないから、人々は雨水を大きな水がめにためて使う。料理や飲み水にはその雨水を、洗濯や掃除には井戸の水を使うんだ。井戸の水をくむのは、たいてい子どもたちの仕事。バケツを持って往復しながら、家の水がめをいっぱいにしていく。
「よいしょ!」
小さな手でロープを引っ張り、重たいバケツをくみ上げるのは大変。でも、子どもたちは慣れた手つきで、水をこぼさないように上手に運んでいく。
洗濯もひと苦労。洗濯機なんてないから、大きなたらいに水をはって庭で手洗いをするんだ。大きなメコン川やそこに流れ込む小さな川でもよく洗濯している人を見かけたよ。日本でも昔は「おばあさんは川へ洗濯へいきました」っていうときがあったよね。
石けんを泡立て、ゴシゴシこすって汚れを落とすんだ。白い服なんかはなかなかきれいにならないけど、熟練の手つきのお母さんたちは、最後にしっかりと絞り上げ、竹竿に干していた。太陽の下で乾いた洗濯物は、ふわっとお日さまの香りがして気持ちいい。
子どもたちは遊ぶだけじゃなく、しっかり家の手伝いもしている。ごはんの準備をする子、お皿を洗う子、野菜を刻む子、それぞれが自分の役割をもって働いていた。みんなで協力して暮らしているんだ。
「冷蔵庫がないのに、ごはんはどうするの?」
答えは簡単!その日の食材は、その日のうちに使い切るんだ。だから、新鮮な野菜やお肉、魚を使った料理が並ぶ。市場で買ったばかりの野菜はみずみずしく、井戸水で洗ったお米は甘みがある。スパイスやハーブを上手に使って、シンプルだけどすごくおいしいごはんができあがる。
ナムグンの暮らしは、便利とはいえなかった。でも、その分、家族みんなで助け合いながら、知恵をしぼって暮らしている。電気や水道がなくても、笑顔と工夫で、しっかり生活しているんだ。
「生きる力」って、こういうところで育まれるんだなぁ。
ナムグンの人々の暮らしを見て、そんなことを感じたよ。